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健康コラム

2015年8月 7日 金曜日

骨折で寝たきりにならないために

□骨折で寝たきりにならないために

 骨は知らないうちに弱ってきます。痛みも何もないのに、あるとき骨密度を測ったら骨がカスカスだった、ということがよくあります。骨粗しょう症がすすむと、

  1)背が縮んでくる
  2)骨折しやすくなる
  3)あちこちが痛くなる

といったことがおこります。骨が折れて寝たきりになってからでは遅いのです。

1.骨粗しょう症の検査

 検査は、骨密度を測る検査と、血液検査で骨の代謝を調べる検査があります。
またFRAXとよばれる方法で、骨折の確率を予測することもできます。

(1)骨密度
 体の骨全体を測るわけにはいかないので、腰・大腿骨・前腕・かかとといった代表的な部分で測ります。腰・大腿骨・前腕はDEXAと呼ばれる方法(X線を使う)により高い精度で調べられますが、かかとは超音波で測るため、ちょっと違った結果になることがあります。ですから、かかとで調べて大丈夫だったからといって安心せず、他の方法で調べることをおすすめします。

(2)血液検査
骨の代謝、つまり骨がどのぐらい壊されているか、どれだけ新しい骨が作られているかということを血液検査で調べます。この結果によって骨粗しょう症の進行を予測したり、お薬の効果を調べたりして、治療方針を決めます。

(3)FRAX
 これは、WHOが統計データをもとに開発したもので、自分のデータを入力してボタンを押すだけで10年以内に重大な骨折の起こる確率を計算してくれます。骨折リスクが15%以上の場合は、治療が必要です。コンピューターを触れる方はどうぞ。
   FRAX: http://www.shef.ac.uk/FRAX/tool.aspx?country=3

2.骨粗しょう症の治療

 みなさんの中には、ジャコ食べてるから大丈夫とか、牛乳飲んでるから心配ないと思っている人はいませんか?骨粗しょう症は食事だけでは予防できません。もちろん、カルシウムやリン、ビタミンDなどは、必要な栄養素ですが、これだけでは骨粗しょう症の治療には不十分なのです。
 いまや骨粗しょう症の薬は数多くあり、どれを使おうかと迷うほどです。

(1)ビスフォスフォネート製剤
  (アクトネル、フォサマック、ベネット、ボナロン、ボノテオ、リカルボ
   ン、ボンビバ)
 これは、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑える薬です。骨折を予防する効果的な薬です。このお薬を使っている時に歯を抜くと顎の骨が溶けると歯医者さんに言われたことがあるかもしれません。これは普通の人にはまず起こりませんが(10万人に1人程度)、医師と歯科医と両方の意見を聞いて、お薬を続けるかどうか決めてもらいましょう。

(2)女性ホルモンに似た薬
  (エビスタ、ビビアント)
 これは女性ホルモンと同じような働きかたで骨粗しょう症を改善します。女性ホルモンのようにガンのリスクを高めることは無いので安心して使えます。

(3)骨を増加させる薬
  (テリボン、フォルテオ)
 これは、骨を作る細胞の働きを活発にするお薬で、強力に骨を増やします。骨折も早く治ります。ただ、両方とも注射薬で、高価であるのと一生のうち一定の期間しか使えないのが残念なところです。

(4)その他 ・・・ 半年に1回注射する薬
  (プラリア)
 これは半年に1回の注射で済むという、画期的な薬です。だからといって、きつい薬というわけではありません。働きは、(1)と同じく破骨細胞の働きを抑えて、骨粗しょう症を改善します。

(5)そして、運動
 そして、特に大事なことは適切な運動です。宇宙飛行士が無重力状態に長い間おかれると骨粗しょう症になることは有名ですね。骨が強くなるためには、骨に力が加わる必要があります。いくらカルシウムを摂って骨粗しょう症のお薬を飲んでも、動かなければ骨は強くなりません。そのために、毎日、運動をしましょう。無理な運動は必要ありません。毎日の散歩と、ラジオ体操で十分です。

   みなさん、骨を丈夫にして、健康寿命を伸ばしましょう!

投稿 
瀬川外科 院長 松井誠一郎

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