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健康コラム

2018年8月 8日 水曜日

歩くと足が痛くなる血管病のおはなし

歩くと足が痛くなる血管病
足の動脈に動脈硬化が起こり血管が狭くなったり詰まってしまうと足を流れる血液が不足して痛みを伴い歩きにくくなります。この様な病気を「閉塞性動脈硬化症」と呼びます。症状の特徴は、歩くことや足の運動を行うことで下肢(股関節から足首まで)特にふくらはぎに疲れやだるさ、痛み、こむら返りなどが起こり歩行が困難となります。ただし、こうした症状は10分ほど休むと軽くなるか消失します。ふくらはぎに起こることが多いのですが、おしりや太ももに生じることもあります。この様に歩くことで生じたりやんだりする歩行障害のことを「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」といいます。「間歇性」とは間隔をおいて起きたり起きなかったりすること。「跛行」とは足を引きずる意味です。この歩行障害は「閉塞性動脈硬化症」の患者さんの約30%に起こります。この病気は重症となると足を切断しなければならない場合もありあなどれません。



「閉塞性動脈硬化症」の患者さんは人口の約1割以下ですが、70歳以上になると約20%に達するといわれ高齢者に多い血管病です。足の切断に至る方はわずか数%といわれ比較的予後のよい病気のようにも思えます。しかし他の動脈硬化の病気である狭心症・心筋梗塞(合併率:約50%)や脳血管疾患(合併率:約20%)を合併する可能性が高いため、閉塞性動脈硬化症の患者さんは5年後には約20%が心臓や脳の血管病を発症し約15%が死に至るといわれています。動脈硬化の原因となる糖尿病、高血圧、脂質異常症のある方や喫煙歴のある方は特に注意が必要です。



閉塞性動脈硬化症かな?と思ったら主治医の先生に相談しましょう。
まず診察では足の皮膚や筋肉の状態、足の動脈の拍動を触れることができるかどうか、痛みはどうかなどをチェックし、必要に応じて次の検査をおこないます。①足関節上腕血圧比(ABI:Ankle-Brachial pressure Index)ABIは、足関節部の血圧を上腕動脈の血圧で割った値で、この値が低い場合心臓と足関節との間の動脈が狭くなっているか、または閉塞性動脈硬化症が起きている可能性が高いことを示します。ABIで病気が疑われた場合、②血管エコー(超音波)検査や③動脈造影検査(CTアンギオグラフィ、MRAなど)で実際に血管の狭窄、閉塞の有無を検査し診断をおこないます。
「閉塞性動脈硬化症」は、それ自体の予後は比較的よいと考えられていますが、他の血管疾患(心臓・脳血管疾患)を合併する可能性が高く、これらの合併疾患が原因で死に至る場合が多いことを忘れてはなりません。この血管病とわかったら足の動脈だけでなく、他の血管病がないかを確かめ、全身的な動脈硬化の対応が必要になります。『木を見て森を見ず』では困ります。血管は頭から足の先まで存在していますから常に『全身を診る』という視点が極めて大切なのです。

投稿
ふじわら内科クリニック 院長 藤原俊樹

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