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健康コラム

2014年12月15日 月曜日

高血圧の基準のおはなし

 高血圧の患者さんは普段は何も症状は出ませんが、血圧が高いまま何年も続くと動脈硬化による心血管病(脳卒中、狭心症・心筋梗塞など)や腎臓病を引き起こす可能性が高くなります。
 2014年4月に人間ドック学会から、150万人のドック受診者の中から、とりわけ今健康と思われる約1万5000人を選び出し、その人たちの血圧値に基づいて正常血圧を決めようという考えが報告されました。それによりますと、血圧は「147/94 mmHg以下が基準範囲」という結果であったため混乱が起きています。この報道を新聞で見た時、高血圧を専門とする私自身も、「あれっ?」と思いました。これまで日本高血圧学会による高血圧の基準は、「診察室血圧が、収縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方あるいは両方で140/90mmHg以上」とされていたからです。今回の人間ドック学会の基準値はこの値よりも甘くなっており、患者さんの中には、健診判断値が緩和されるとか、正常範囲の値が変わるとか、誤解を受けた方が多くおられると思います。
 しかしながら、よくよく人間ドック学会の報告の中身を読んでみますと、その基準値はあくまでも、ある時点で健康と考えられる人々の血圧の分布範囲(「基準範囲」)を統計学的に示しただけであり、疫学的研究に基づいて将来脳卒中や心血管病の発症を予測する「予防医学的閾値」とは異なっています。今の時点で健康である人が将来も健康かどうかはわからないわけですから、この人間ドック学会の「基準範囲」に入っているからといって、その人々が5年、10年、20年先に病気にならないという意味ではないということです。本来高血圧の基準は、将来の心血管病の発症を抑えることを見据えたもので、かつ治療目標値となり得るものでなければなりません。その安全基準とも言える「予防医学的閾値」というのが従来の「診察室血圧140/90mmHg未満(家庭血圧なら135/85mmHg未満)」であり、これまでと何ら変わることはないのです。血糖やコレステロール、尿酸なども全て同じ考え方でコントロールされるべきです。
今回、マスコミの報道も少し説明不足であったと思います。高血圧による心血管病や腎臓病になりたくない方は「基準範囲」ではなく、「予防医学的閾値」を重要視されるよう願います。決して人間ドック学会の「基準範囲」内になったからといって治療を受けなくてもよい、薬を減量・中止してもよいというわけではありませんので、自己判断せずにかかりつけ医の先生によくご相談下さい。
なお、糖尿病または腎臓病の患者さんについては、目標血圧は診察室血圧が「130/80mmHg未満(家庭血圧なら125/75mmHg未満)」とさらに厳しいコントロールが求められていることを付け加えさせていただきます。

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国立病院機構 神戸医療センター 内科 三輪陽一先生