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健康コラム

2015年7月17日 金曜日

下肢静脈瘤のおはなし

立った時に足に血管が浮き出てくる病気のことを下肢静脈瘤といいます。今回はこの下肢静脈瘤について簡単に説明します。

●典型的なできかた
静脈というのは手足の先から心臓へ向かって血液を送っている血管で、動脈と違って血圧は低く、血管壁は薄くできています(例えば、動脈が120mmHg前後の血圧があるとすると静脈は0-5mmHg程度)。下肢静脈は血圧が低いにもかかわらず重力に逆らって心臓へ静脈血を戻さないといけないのですが、この時に駆出ポンプとなるのは下肢筋肉であり、また筋肉が緩んだ時に血液が逆流しないよう静脈には逆流防止弁が数か所についています。
長時間の立ち仕事や妊娠・出産などにより血液が足先から心臓へ戻りにくくなると下肢の静脈圧が上昇し、そのうちに静脈の逆流防止弁が壊れてしまいます。弁が壊れると血液の逆流が起こり、下肢静脈圧が高くなり、徐々に静脈瘤を形成するようになります。静脈瘤は大腿~下腿内側にモコモコと浮き出るものが最も多いですが、そのほかに下腿背側にできたり、蜘蛛の巣状や網の目状に細かく浮き出ることもあります。

●下肢静脈瘤になりやすい人
1) 長時間の立ち仕事
美容師・理容師・調理師・販売員・教師など、同じ姿勢で立っている時間が長い仕事に従事している方は下肢静脈瘤が発症しやすいとされています。
2) 妊娠・出産
妊娠時には子宮が大きくなり、骨盤内で静脈を圧迫しますので下肢静脈の心臓への戻りが妨げられます。多くの女性が妊娠を契機に発症します。
3) 体質
遺伝的体質により下肢静脈瘤になりやすい方もおられます。

●症状は?
比較的軽い症状としては、1)下肢静脈がモコモコと怒張するあるいは下肢静脈が網の目状に透けて見える、2)かゆみ、足の腫れ、こむらがえり、などがあります。
一方、すぐにも治療が必要な症状としては、3)静脈瘤部の皮膚発赤、熱感、痛み、しこり(血栓性静脈炎をおこした症状)、4)皮膚の色素沈着や皮膚硬化、潰瘍形成(うっ滞性皮膚炎をおこした症状)などがあります。
なお、下肢静脈瘤は深部静脈血栓症や肺梗塞(エコノミー症候群)の発症原因として挙げられていますがそれほど頻度の高いものではなく(低リスク因子)、これを理由に治療を受ける必要はまずありません。

●おもな治療方法は?
1)弾性ストッキングによる圧迫療法
医療用の弾性ストッキング着用で外から圧迫する方法です。静脈瘤そのものが治るわけではありませんが、むくみなどの症状がとれやすく、また静脈瘤の増大や増悪の予防になります。
2)硬化療法
静脈瘤に細い針を刺して硬化剤を注射し、静脈瘤をつぶしてしまう方法です。日帰り手術が可能で傷跡も残りませんが、治療した静脈に強い痛みやしこり、色素沈着を生じることがあること(血栓性静脈炎の併発)、硬化療法のみでは5~10年のうちに再発が高頻度でおこること、が問題点として挙げられます。
3)手術療法
静脈を抜去したり(ストリッピング手術)摘除したりする根本的な手術治療です。手術創は残りますが、静脈瘤そのものがなくなるので、最も確実な治療法で、どんな静脈瘤にも対応できます。全身麻酔または腰椎麻酔・伝達麻酔が必要ですが、1泊2日入院あるいは0泊1日入院で手術を受けていただくことが可能です。
4)レーザー治療
静脈内にカテーテルを入れてレーザーで静脈瘤を内側から焼いてつぶしてしまう方法です。数年前から保険適応となり、また局所麻酔や伝達麻酔で行いますので日帰り手術が可能ですが、屈曲の強い静脈瘤には向かないなど、まだすべての静脈瘤が適応というわけではありません。

●日常生活での注意点
1)下肢に血液が溜まらないように、長時間の連続した立ち仕事はさけましょう。立ち仕事や長時間座位をとるとき(飛行機やバス旅行など)には時々あしを高くあげて休息したり、あしの屈伸運動などをしましょう。また、弾性ストッキングをはくのも有効です。
2)夜寝るときには、クッションやふとんなどを使用して下肢を高くして休むと腫れが軽減します。
3)下肢の清潔を保ちましょう。

投稿
新須磨病院 外科 辻 義彦