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健康コラム

2017年4月 4日 火曜日

甲状腺のおはなし

甲状腺の病気
 甲状腺は、喉ぼとけの下あたりにあり、蝶が羽を広げたような形で、気管に被いかぶさるように張り付いている臓器です。重さ約10g、右側を右葉、左側を左葉と呼び、両葉とも、大きさは、横幅2~3cm、縦に4~5cm、厚さ約1cmで、筋肉に被われており、普通は手で喉を触っても甲状腺の位置を確認する事は出来ません。
 甲状腺から分泌されています甲状腺ホルモンは、いわば"元気の源"のようなものです。全身の新陳代謝を活発にし、交換神経や心臓などの活動を高め、汗や脈拍を調整するなどの働きがあります。
 甲状腺がホルモンを過剰に合成している状態を、甲状腺機能亢進症といい、そのほとんどがバセドウ病です。逆にホルモンの合成が不足している状態を、甲状腺機能低下症といい、そのほとんどが橋本病です。
 両者とも免疫の異常によって起こる自己免疫疾患です。アレルギー性鼻炎が鼻の粘膜に、リウマチが関節に作用する自己免疫疾患であるのと同様に、バセドウ病では自己免疫が甲状腺を刺激するように働き、甲状腺機能亢進状態に、橋本病では甲状腺を壊すように働き、甲状腺機能低下状態へと導きます。
 バセドウ病は、女性に多いのが特徴で、成人女性の200~300人に1人の割合で発症するといわれ、特に20~40歳代に多く見られます。症状としては、新陳代謝が異常に活発になるため、動悸、息切れ、疲れやすい、多汗、手指のふるえ、体重減少、イライラする、食欲亢進、下痢・軟便、月経過小、首の腫れ、眼球突出などがあります。診断は、血液検査にて、甲状腺ホルモン、自己抗体を調べることにより、ほぼ診断がつきますが、場合によって、バセドウ病では通常より多くのヨウ素が甲状腺に集められることを利用した、アイソトープ検査のヨードシンチを行うこともあります。治療は、抗甲状腺薬を用いた薬物治療が基本ですが、薬物治療が上手く行かない場合、甲状腺が非常に大きく腫れている場合などには、放射線ヨード治療や、手術療法を考えます。
 橋本病は、やはり女性に多く、成人女性の10~20人に1人の割合で発症するといわれ、とても頻度の高い病気です。特に40歳以上に多く見られます。症状としては、バセドウ病とは反対に、新陳代謝が低下するため、全身倦怠感、傾眠傾向、皮膚乾燥、寒がり・皮膚冷感、顔・手足の浮腫、食欲がないのに体重増加、便秘、嗄声、月経過多などがあります。
診断は、血液検査にて、甲状腺ホルモン、自己抗体を調べます。橋本病と診断されても、
甲状腺機能低下症までに至る人は、大体4~5人に1人といわれています。治療は、甲状腺機能が正常に保たれている場合は無治療ですが、甲状腺機能が低下している例では、甲状腺ホルモン剤を投与することにより、足りなくなった甲状腺ホルモンを補充します。
 バセドウ病は更年期の症状、橋本病は加齢による症状と似ているため、どちらも気が付きにくい病気です。他の病気と区別して、早期に発見し、適切な治療を受けるためにも、40歳以上の女性は、一度、検診にて甲状腺ホルモン値を測定するのも望ましいと思われます。 

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前田医院 院長 前田章雅