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健康コラム

2018年4月 6日 金曜日

災害医療(特に大規模災害医療について)のおはなし

 阪神淡路大震災、東日本大震災、そして熊本地震からまもなく2年が経ちます。災害は、地震以外にも台風や大事故、さらに近年は国民保護計画にあるように外国やテロによる武力災害、いわゆるNBC(核・生物・化学物質)災害といったミサイルや原子力災害など様々です。
大規模な災害時は、十分な医療が行える平時の救急医療とは違い、必要となる医療が圧倒的に不足した状況での医療となります。そのため多数の患者に対して限られた医療を迅速かつ効果的に行う必要があり、一人でも多くの救える命を救うため、「TTT」という三つのT(T:トリアージ(選別)・T:トリートメント(治療)・T:トランスポート(移送))という考え方にもとづき、まずトリアージが行われ、次にそれに応じた応急医療・処置が行われ、適応となる重症の患者は被災地外へ搬送されます。
災害発生から主に48時間以内の急性期の医療は、DMAT(災害派遣医療チーム)が、災害拠点病院や消防や自衛隊等との連携をもとに上記の3Tにもとづいた医療を行います。それ以後の医療は、日本医師会のJMAT(日本医師会災害医療チーム)などが、日赤その他多くの医療チームと協力して被災地の医療体制が回復するまで支援します(図1)。
 JMATの役割は、避難所や救護所等での医療や医療支援が少ない「空白地」の把握や巡回診療、在宅の被災者の健康管理や避難所の衛生状態、感染症予防など多岐にわたります。
 また大規模災害時には、多くの病院も被災し、通信も困難となります。そのため最近、EMIS(広域災害救急医療情報システム)という、医療機関と行政や関係機関(消防、自衛隊など)との情報共有ツールがあり、災害時の病院・医院や救護所などの情報をリアルタイムに共有するシステムが整備されつつあります。実際の被災地では、その他にも刻一刻と変わる膨大な医療・介護・福祉の確かな情報を多くの医療チームや行政や関係機関などが共有しながら連携をすすめてく必要があります。
 一方、災害において、私たちには「自助」・「共助」・「公助」が必要です。大災害時は当初、「公助」である行政・消防・警察などは十分に対応しにくく、自らの命は自らで守る「自助」、また自分たちのまちは自分たちで守る「共助」が必要で、須磨においても21の「防災コミュニティ」が活動しています。
 自助としては、平常時から災害・防災を自分のこととして学び、ハザードマップで自宅の危険性を知り、家具の固定や自宅の耐震化、不燃化対策を行い、水や食料などの備蓄(3日から1週間)、そして持ち出し袋にマスクやライト、常用薬、保険証・母子手帳・お薬手帳などを入れることや、基本的な応急処置や心臓マッサージなどを学ぶことなども必要と思います。
 共助としては、地域の防災マップの作成や防災訓練とともに、行政や消防・警察などとの協力が必要です。また災害時には、病弱な高齢者や障害者といった要援護者が取り残される場合が多く、平時から地域みんなで災害時には要援護者を優先して守っていくという意識が必要です。
私は熊本地震の時、兵庫県JMATとして、発災1週間後と1ヶ月後に益城町に赴きました。兵庫県JMATは、全国からのJMATをはじめ様々な医療チームを統括する重責を任されました。また避難所でのノロウイルスなどの感染症予防や、駐車場での車中泊が多かったため、エコノミー症候群予防などの対策が必要でした。
南海トラフ地震などはいつ起きてもおかしくない状況です。災害の種類や規模は様々で発災後も常に想定外のことが次々と起こります。私の赴いた益城町でも、要援護者のための福祉避難所に、健常者が多数避難しました。また各避難所の状況もそれぞれ様々で、自主的な取り組み(共助)がうまく出来ていないところでは1ヶ月経過後も、要援護者への配慮などが十分ではないように思われました。
普段から災害は、自分や家族のこととして、さらに地域みんなで守る意識と行動が必要です。行政や消防・警察、そして須磨区医師会も加わり、地域みんなで、過去の災害に学び、想定外の様々なことが起こることを念頭に防災計画や受援計画を立て、迅速かつ柔軟に対応できる対策を考えておく必要があると思います。
 災害医療は、その後も引き続き、要援護者への配慮や、孤独死など災害関連死への対策、心のケア等が大切で、地域で包括的にみんなで支えていくことが必要と思います。

《図1:日本医師会HPより》

その他参考:
 ①国民保護計画(http://www.kokuminhogo.go.jp/)
 ②くらしの防災ガイド

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おち内科クリニック 院長 越智深