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健康コラム

2016年12月 5日 月曜日

めまいのおはなし

さて、今回はめまいについてのコラムです。めまいというとみなさんはどのような症状を思い浮かべるでしょうか。みなさんの思うめまいと耳鼻科医にとってのめまいに相違はないでしょうか。ご興味のある方はご一読いただければ幸いです。

☆めまいの性状
めまいを訴えて受診される患者さんの話をよく聞いてみるとだいたいはこの4種類に分けることができるでしょう
① 天井がぐるぐる回るような回転感のあるめまい
② 船に乗っているようにふわふわする、動揺感のあるめまい
③ 歩いていると足元がふらつく、平衡感覚の違和感
④ 突然クラッとする立ちくらみ
※①~③は耳のめまいの可能性がありますが、④はほぼ耳は関係ないと言えるでしょう

☆めまいの原因
めまいと一言でいっても、全部が全部耳鼻科の病気ではないのです
大きくは3種類に分けられます
① 脳からくるめまい:基本的にはめまい以外の症状(ろれつが回りにくい、手足が動かしにくい、物が二重に見える、飲み込みにくいなど)を伴うことが多いです
なお、吐き気や冷や汗は脳からのめまいでなくとも生じます(乗り物酔いと同じ)
② 耳からくるめまい:後述します
③ その他:循環器の病気(高血圧、低血圧、不整脈など)、目の病気、自律神経失調、精神的なものなど
※自覚症状から脳からくるめまいを疑ったのなら脳外科クリニックや入院施設のある病院を受診したほうがいいかもしれません。CT・MRIで異常指摘されなければ、急ぐ必要のあるめまいではないので落ち着いて耳鼻科医のもとで原因検索をしていきましょう。耳からくるめまいも否定されたら、必要に応じて内科で検査してもらいましょう。

☆耳からくるめまい
原因は多岐にわたりますが、よく遭遇するものは下記4疾患です
① 良性発作性頭位めまい症(通称BPPV)
めまいの中で最も多くみられます。「朝、寝返りをうった時に突然ぐるぐると目が回って、しばらく(ほんの数秒程度)するとおさまった」というのが典型的パターンです。
何らかのきっかけで三半規管に前庭の耳石が紛れ込み、頭を動かす度にその石が三半規管内をコロコロ動くせいでめまいが生じると理解していただければ結構です
命にかかわる悪い病気ではありませんが、その耳石があるうちはめまいが生じるので、耳石が消えるように、耳石をもとに戻す理学療法を行うと劇的になおります。時間が経った方は少し時間かかることもあります。また、一度なるとまた起こりやすいです。

②  メニエール病
なぜか有名な病気で、"自称メニエール病"の患者さんがかなりの数存在しますが、実際には有病率は10万人に16人程度でそこまで多くはありません。耳鳴や難聴に伴うめまいが数十分から数時間生じるのが典型的です。症状が一旦治まっても、めまいや耳鳴難聴の反復を認めます。
発症機序は、ストレス→耳の奥がむくむ(内リンパ水腫)→メニエール病発症と言われています。治療は内耳のむくみをとる薬の投与やストレスコントロールが中心になりますが、施設によっては手術療法も行われています。
原因の根本となるストレスが続く限り治癒しないので、もし発症すれば長く付き合っていくことになることが多いです。

③  突発性難聴
現在のところはっきりとした原因は解明されていませんが、「ある日突然片方の耳が聞こえなくなる」という病気です。めまいを伴うことがあります。メニエール病との鑑別が時に困難で、発症当初は突発性難聴と診断したけれども、経過観察中にメニエール病だったと分かることもあります。治療はステロイド投与が一般的です。治る人、ちょっと良くなる人、全然良くならない人と治療効果は人によってマチマチです。めまいを伴っている場合は治りにくいとされています。

④  前庭神経炎
風邪をひきウイルス感染により前庭神経に炎症がおこり、突然めまいが生じる病気です。耳鳴や難聴の随伴はみとめません。発症から数日間は動けないくらいのめまいが持続しることも多いです。
治療は対症療法が中心で、ステロイドを投与することもあります


☆最後に
めまいと一言で言ってもかなりの種類があり、科も多岐にわたります。大切なことは命に係わる病気かそうでないかをまず判断し、致命的な疾患が否定されれば、主治医とともにゆっくり原因疾患をさがして治療していくことです。

投稿 
稲守耳鼻科 院長 稲守徹

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2016年11月14日 月曜日

痔のおはなし

・ 痔ってどんな病気?
肛門の周囲にできた疾患をまとめて痔といいます。特に、内痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔ろうの3つは頻度の多さから「3大痔疾患」と言われています。

・ 他の動物には痔はない?
痔は人間特有の病気であり、他の動物にはほとんど発生しないと言われていますが、なぜでしょうか?
その答えは人間の進化の過程にあります。もともと人間は他の動物と同じように4本足で歩行していましたが、進化に伴って2本足で歩くようになりました。その場合、肛門付近の血液は重力に引かれるためうっ血しやすい状態になります。そこに、長時間の立ち仕事や便秘を繰り返すことなどで肛門に強い力が幾度もかかり、肛門の血管が腫れたり切れたりして痔になるわけです。

・ 「3人寄れば痔主が一人」
以前ある製薬メーカーが成人男女に対面アンケート調査をしたところ、約36%の人が「自分は痔の気がある」と答えたそうです。このことから3人が集まればそのうち1人は痔持ちであると言われています。

・ 痔と人間とのかかわり -あの人も痔だった-
人間と痔とのかかわりは古く、紀元前2500年頃にはエジプト宮廷に肛門医が存在していたとの記録があります。また「目には目を、歯には歯を」で有名な古代バビロニアのハムラビ法典には痔の治療代の取り決めに関しての記載があり1)、太古の時代から人間は痔とかかわっていたことが伺えます。
他にも、痔は歴史上の有名人物も悩ませました。ブルボン王朝の最盛期を築いたルイ14世は国内外に大いなる威光を示し太陽王とも称されましたが、同時に酷い痔瘻に悩まされており48歳のときに手術を受けています1)。黄熱病の研究で知られる野口英世も、恩師にあてた手紙で「昨年十月頃より痔をなやみ夜分も安眠を不得、月を追うて重り行く傾向有之候。(昨年10月ごろから痔がひどく夜も眠れない。徐々にひどくなる。)」と書きしたためています2)。



・ 痔を予防するために
痔は高血圧などと同じく生活習慣病といわれています。長時間の立ち仕事、便意を我慢する、排便時の過度のいきみなどはすべて肛門に負担がかかり痔になりやすくなります。このような生活習慣が思い当たる場合は見直してみましょう。

・ 痔の治療
すでにできてしまった痔に対しては治療が必要となります。
痔の種類によって治療法が異なりますが、内痔核(いぼ痔)の場合、症状が軽ければ坐薬などの薬物療法が主体となります。症状が進行した場合は手術治療となりますが、最近は薬剤を注入することで痔核の縮小をはかる硬化療法(ALTA法)なども登場し、以前よりも体への負担が少ない治療が行われるようになってきました。

・最後に
肛門の診察は恥ずかしさが先に立ってしまい、受診をためらいがちになります。しかし、痔から大腸癌や肝硬変などの重篤な内臓疾患が見つかることもあります。おしりの周囲に違和感があれば必ず専門医の診察を受けることが重要です。


参考文献:
1) ジャン ゴルダン・オリヴィエ マルティ(2003)『お尻とその穴の文化史』作品社.
2) 立川昭二(2002)『病いの人間』新潮社.

投稿
神戸医療センター 消化器外科 田上修司

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2016年9月27日 火曜日

ニコチン依存症のおはなし

タバコの持つ種々の弊害  
 タバコをやめたいと思っているのになかなか止められないのはなぜでしょう? 多くの喫煙者の方が、タバコが健康に良くないことをご存知です。タバコは血管収縮反応を高め、動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めます。また多くの発ガン物質を含むタバコの煙は肺がん、咽頭がんをはじめ、全身ほぼすべてのがんの発症率を高めます。また吐き出された煙や副流煙にも有害物質は含まれるため、家族や周囲にいる方が受動喫煙により健康被害を受けます。 (2016年8月31日、国立がん研究センターは、受動喫煙による日本人の肺がんリスクは約1.3倍であり、リスク評価を「ほぼ確実」から「確実」に、アップグレードしました。これに伴い、「日本人のためのがん予防法」においても、他人のたばこの煙を「できるだけ避ける」から"できるだけ"を削除し「避ける」へ文言の修正を行い、受動喫煙の防止を努力目標から明確な目標として提示しました。)  このように自身にも周囲にも、良いことの全くないことから、多くの喫煙者ができればタバコを止めたいと思っています。でも一度禁煙してみても失敗した経験をお持ちの方も多いことでしょう。ある報告によれば、喫煙者の70%がタバコをやめたいと思っているのに、禁煙出来ない。あるいは禁煙しても、70%前後の方が1年以内にまた吸ってしまうとのことです。では、何故やめられないのでしょう?  単に「意志が弱いから」だけなのでしょうか?
ニコチンの持つ二つの依存性
 実は、タバコに含まれるニコチンに、麻薬やアルコールと同様の依存性があるからなのです。タバコを吸うと数秒でニコチン血中濃度が上がりますが、このニコチンが脳内のニコチン受容体を刺激して快感を生じるドパミンという物質を放出します。喫煙が習慣化すると常にこの快感を求め、一定以上のニコチン血中濃度が必要となり、ニコチン血中濃度が低下するとイライラして、ニコチンの血中濃度を上げるため次のタバコを吸うといった悪循環に陥ります(肉体的な依存)。 血中濃度が下がった時に感じるイライラ感、不安感、だるさ、ふるえ、苦痛などのつらい症状を離脱症状といいます。  また、食後の一服、入浴後の一服など喫煙行動が「儀式」のように組み込まれて習慣化されてしまうことで生じる心理的な依存もあります。いずれにせよニコチンによって脳が「乗っ取られた」状態であります。
ニコチン依存症という疾患
 これまで禁煙は個人の努力の問題とされてきました。しかし、喫煙がもたらす健康障害をさらに積極的に予防するため、厚生労働省は新たに平成18年4月からは、禁煙を希望される方のうち、一定の条件を満たすものを「ニコチン依存症」という疾患としてとらえ、医師による禁煙指導を「治療」と位置づけ、これを医療保険の給付対象といたしました。さらに平成18年6月からはこれらの方に用いる禁煙補助製剤の一つ、ニコチンパッチ(商品名 ニコチネルTTS)を、さらに平成20年4月からは内服薬バレニクリン(商品名 チャンピックス)を保険適用としました。
禁煙外来では使う薬剤を選択します
 ニコチンの肉体的な依存性から抜け出すために禁煙外来では上記2種の薬剤が用意されています。  ゆっくりとニコチンの血中濃度を下げていくために、ニコチンをタバコで摂取せずに他の方法で摂取する方法としてニコチンパッチがあります。  ニコチンパッチは皮膚に貼ると皮膚からニコチンが浸透して一定時間、血中ニコチン濃度を保ちます。8週間で大きさの違う3種類のパッチを順次使用していって徐々にニコチン血中濃度を下げ、最後に終了します。  一方、内服薬はニコチン受容体に結合することで、ニコチンそのものが受容体に結合することを邪魔するため、タバコを吸っても美味しく感じにくくさせ、満足感が低下し、喫煙への欲求を弱めます。同時に内服薬はこの受容体に結合することでそれ自体、若干のドパミンを放出するので禁断症状を弱めます。12週間で計5回の受診が必要です。  どちらの薬剤を使用するかは、患者さん個々の身体状態や合併疾患等をお聞きして、本人に合った薬剤を選択することになります。
心理的な依存を断ち切る方法
 ニコチンによる肉体的な依存は上記薬物の助けを借りるとして、更にニコチンの心理的な依存を断ち切る方法としては、生活上の「習慣」を積極的に代えていく工夫も必要になります。何よりも大切なのは「タバコを絶対にやめる!」という強い意志です。禁煙外来では上記禁煙補助製剤を適宜処方しつつ、個々の患者さんの状況に合わせた指導・アドバイスを行っていきます。
保険が効く禁煙治療
保険診療で禁煙治療を受けられる方には一定の条件があります。 ニコチン依存症管理料を算定している医療機関(予め医療機関にお尋ね下さい)を受診の上、1)簡単なアンケートでニコチン依存症と診断してもらうこと、2)ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること、(注 若年者の禁煙をさらに促進するため、2016年の医療制度改正によりブリンクマン指数>200が適応になるのは年齢が35才以上の方限定となりました)3)直ちに禁煙することを希望し、禁煙治療について説明を受け、治療を受けることを文書により同意することなどが必要になってきます。なお保険適応となる治療期間は12週間で、それを超えた場合は自己負担治療となります。保険診療の場合は、かかる費用は薬代も含め、3割負担の場合、5回の診療で約2万円です。

投稿
矢谷内科循環器科 院長 矢谷暁人

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2016年6月14日 火曜日

神経内科という診療科について

 地下鉄妙法寺駅前で昨年開業しました。風邪や高血圧などの内科疾患で来られる患者さんのほか、手足のふるえ、めまい、物忘れなどの相談に来られる患者さんも増えています。まだ地域の神経内科医は全国的に少なく、脳神経の症状について、すぐに相談できる医療機関がなかなかないというのは、私が医師になった20年前とあまり変わっていないようです。
 今回は、脳神経の病気で最も多いパーキンソン病、認知症という病気を例に、神経内科とはどのような診療科であるのかをご紹介します。
 パーキンソン病や認知症の大半を占めるアルツハイマー病、レビー小体病はいずれも「脳変性疾患」に分類されており、原因・治療はまだまだ研究途上です。パーキンソン病ははじめ手足のふるえで気づかれることがおおく、次第に字が小さくなったり、歩くのが遅くなったりします。認知症は原因となる病気によってちがいますが、アルツハイマー病の場合はふつう記憶が短時間しか保持できない、日付が思い出せないといった症状から始まります。
 神経内科医にとって、認知症もパーキンソン病も診断のプロセスは同じです。いつからどのような症状が現れ、いま困っている症状はなにか、以前どんな病気にかかったことがあるか、いま服用している薬やサプリメントはないかなどを丹念に伺います。伺いながら、病気が怪我から来ているのか、飲んでいる薬剤から来ているのかなどを考えます。つぎに神経学的診察にもとづいて、脳、脊髄、末梢神経、筋肉のどこに病気があるかを推定します。MRIなどの画像検査はできるだけ受けていただくようにしています。今の時代、名人芸的な診察だけではダメで、誤診を防ぐためにも画像の情報はかかせません。もちろん体のどこを検査すべきなのかなどの判断をおこなうのも神経内科医の役割のひとつです。
 このようにたくさんの情報を集めますので、診察には時間がかかってしまいがちです。しかし忘れてはいけない医学の基本である、話を「聞く」、身体を「触る」をいまでもそのまま実践している診療科であるという自負をもって診療にあたっています。抗パーキンソン病薬、抗認知症薬とも期待される効果と同じくらい副作用が存在しますので、治療はよかったか、よくないことはなかったか、なども謙虚に伺うよう心がけています。

投稿
戸根内科・神経内科医院 院長 戸根幸太郎

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2016年3月28日 月曜日

逆流性食道炎のおはなし

●逆流性食道炎は、胃の内容物が食道へ逆流することによっておきる病気です。胃液に含まれる胃酸により、胸焼け(喉元からみぞおちあたりが焼けるような感じ)や呑酸(どんさん:酸っぱい胃液が口のほうまで上がってくる感じ)などの症状があらわれます。胸のつかえや痛みを自覚したり、慢性の咳や中耳炎の原因となったりする場合もあります。
●最近、逆流性食道炎の症状を訴える人が増加しています。その理由として、①日本人の胃酸の分泌量が多くなった、②お腹に圧力がかかりやすい体型の人が増えた(肥満、骨粗鬆症で腰が曲がった高齢者)ことなどが考えられています。①の原因には、食生活の欧米化による動物性脂肪やたんぱく質の摂取量の増加があります。さらに、ピロリ菌感染率が低下し、生涯にわたって胃酸の分泌が保たれる人が多くなったことも要因とされています。また、脂肪の摂取は、胃と食道のつなぎ目を弛緩させ、逆流を誘発します。
●逆流性食道炎の予防には生活習慣の改善(食べ過ぎない、脂肪分を控える、食べてすぐ横にならない)が有効です。ただし、症状が続く場合は速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。内視鏡検査で、逆流性食道炎の重症度を判定するとともに、癌などほかの疾患がないことを確認しておくことが望ましいです。
●逆流性食道炎の治療には、胃酸の分泌を抑える薬が効果的です。食道や胃の運動を活発にして逆流を防ぐ薬が使われることもあります。薬を中断すると再発することが多いので、薬の量や服用期間は、医師とよく相談して決めるようにしましょう。

投稿
しらかわクリニック 院長 白川勝朗

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