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健康コラム

2014年10月15日 水曜日

ピロリ菌のおはなし

ピロリ菌のおはなし

 秋から年末にかけて、例年健康番組が目白押しです。ダイエットものだったり、お笑い芸人の健康診断ものだったり。
 そんな中でも、必ずと言っていいほど取り上げられるのがピロリ菌です。
 正式名称ヘリコバクター・ピロリ菌。3-5マイクロメートルで、胃の粘液内に生息します。
 そして胃や十二指腸に様々な炎症をおこして、消化性潰瘍や胃がんの原因になります。
 従来、胃酸の中で生息できる菌などいないと思われておりましたが、1984年にその存在が発見されて以降、その正体が徐々に暴かれてきました。全部書くと半年くらいのシリーズものになりそうなので、Q&A方式で進めます。

Q1:ピロリ菌はみんな持っているの?
A;:幼少時に感染が成立します。水事情の悪い地域や年代に多く、ペルーでは井戸水から検出されたという報告もあります。日本では、戦後上下水道が整備されてからは感染率は激減しております。70歳代では約7割のひとが感染していると言われますが、その一方20歳代での感染率は2割未満と言われております。

Q2:どうやって調べるの?
A:胃カメラで胃の組織を採取して調べたり、血液検査や糞便など、色々な調べ方があります。注意しなければならないのは、胃カメラや胃透視を受けて、胃がんなどの病変がないことそして慢性胃炎があることを確認してからのピロリ検査になるという事です。

Q3:どうやって除菌するの?
A:抗生物質を2種類そして制酸剤(胃薬)を1種類。それを朝夕の2回そして1週間内服して貰います。約80%の除菌成功率です。抗生物質にアレルギーのある人は、難しいです。

Q4:除菌できたかどうかはどうやって判定するの?
A:もちろん胃カメラを使っての判定もできますが、殆どの人はまっぴら御免と断ります。尿素呼気試験といって、判定薬を内服して20分程度で終了する検査がありますので、専らそれを使用しております。

Q5:除菌したら、もう胃カメラは受けなくていいの?
A:50歳半ばで除菌した場合。50年分の胃がんリスクは胃に蓄積されているので、年に1回の胃カメラは必要です。除菌は若いうちにしておいた方がメリットがあります。

紙面の都合もあるので、最後に。
除菌によって胃がんのリスクは減らせます。
そして、次の世代にピロリ菌を残さないためにも、一度は胃カメラを受けてピロリ菌のチェックをしておきましょう。

投稿
まえ川 内科クリニック 院長 前川透

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2014年9月29日 月曜日

乳がんのおはなし

乳がんのおはなし               

乳がんは中年女性に最も多い癌で、女性の12人に1人がかかり、年間12000人の方が亡くなられています。乳がんは、ほとんどが女性ホルモンに依存する癌であり、40歳代後半をピークにして、20歳代から80歳代まで幅広い年代に発生します。
他の癌と同じように早期発見が大切です。ただ、乳がんは体の表面にある乳房にできるので、自分で見つけることができる数少ない癌といえます。

◆ 症状
自覚症状は、「乳房のしこり」ですが、ボリュームのある乳房では、小さなしこりを触知することが難しく、癌とわかった時点でかなり進行していることがあります。早期発見するためには、マンモグラフィーや超音波検査を受けられることが大切です。
日本は欧米にくらべ検診の受診率が圧倒的に低かったのですが、最近は行政による啓蒙活動のためか、しこりとして自覚する前に、検診で見つかることが増えてきました。

◆ 鑑別診断
 しこりがすべて乳がんというわけではありません。乳腺症といって生理のある女性に特有の乳腺の変化や、線維腺腫という良性の腫瘍もあります。

◆ 検査方法
視診・触診で、皮膚の変化やしこりの有無を確認します。その上で、乳房レントゲン撮影(マンモグラフィー)や超音波検査を行います。その結果、腫瘍陰影があれば、針で穿刺をして細胞をとり、顕微鏡でがん細胞の有無を確認します。癌が確定すれば、MRIやPET検査で癌の広がりを調べることもあります。

◆ 治療方法
手術、化学療法、ホルモン治療、放射線治療が乳がんの治療方法です。手術と放射線治療は、その部位だけに有効な治療なので局所療法といい、化学療法やホルモン治療は体全体に対する治療なので全身療法といいます。乳がんの進行度、転移の有無、癌細胞の種類によって、4つの治療方法を組み合わせて治療を進めていきます。
 最近は、化学療法やホルモン治療の新しい薬が数多く開発されてきており、転移や再発した場合でもかなりの効果を期待できるようになりました。

以上乳がんについて簡単にご説明しました。早期発見・早期治療をすれば、恐れるに足りない病気です。ぜひ色々な機会を捉えて、検診を受けるようにしてください。

投稿
新須磨病院 院長 澤田勝寛

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2014年7月30日 水曜日

はやりめ(流行性結膜炎)のおはなし

はやり目の季節です。

 はやり目は、正式には流行性角結膜炎といい、目の白目(結膜)が急に充血し大量のメヤニがでる、夏に流行しやすい結膜炎です。
 ただ最近では、夏以外でも流行することもあります。
 原因は、アデノウイルス(8型、19型、37型)によっておこります。主に手を介した接触感染で、ウイルスに感染した眼を手で触れると、手にウイルスが付着し、そのまま、いろんな物に触ると、その物にウイルスが付いて、他の人がそれに触れて、その手で目をこするなどした場合に感染するという経路がほとんどになります。
感染して7~14日して症状が発生し、10~14日症状が続きますが、最初の1週間が特に症状が強くでます。症状は、強い充血、メヤニ、涙、まぶたの腫れです。
 耳の前のリンパ節が腫れることもあります。片方の目に発症した場合、もう片方の目にもうつることが多いです。まれに黒目(角膜)に軽い混濁が残ることがありますが、大人であれば、さほど問題はありません、ただし小さな子供さんの場合は、まれに
障害が残る場合がありので、しっかりと治療が必要です。
 これに対して、有効な治療方法(目薬)はなく、ウイルスの活動性が自然に低下してくるのを待つしかありません。ただ、炎症(充血)に対しては、ステロイド点眼液で少しでも軽減させる必要があります。角膜炎がひどくなると混濁が残ることがあります。
また、目が弱っているので、他の細菌が感染しやすくなっています。そのため抗生剤の点眼が必要です。発症して4~5日は特に症状が強くなってくるので、目薬が全然効いてないと思われがちですが、細菌の感染は乳幼児の場合、角膜穿孔(穴が開く)を
起こすこともあるので、必ず効いてないように思えても、点眼を続ける必要があります。
 ウイルスに対する抵抗力を上げるため、休養をとって体力を保つのも大事です。
 また、この結膜炎は非常に感染力が強く、学校保健安全法上、学校感染症に指定されており感染力がなくなるまで、学校を休まなければなりません。
 また、大人でも原則休職が必要ですが、どうしても勤務が必要な場合は、職場の上司方と相談していただく必要があります。
他の人にうつらないようにするには、手をよく洗う、目をできるだけ触らない、家の人と同じタオルを使わない、よく触るドアのノブなどは、アルコールなどで消毒する。学校、プールなどには、医師の許可があるまで休む必要があります。
結膜炎は他にもアレルギーなど、他の原因でも起こるので、充血、メヤニが多くなる時は、できるだけ早く眼科医の診察をうけてください。

投稿
田村眼科医院  院長 田村泰

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2014年6月20日 金曜日

足白癬(水虫)のおはなし

 水虫は、一度発症すると治らないと思っている方が多いのではないでしょうか。 
 「治らない」のではなく、「治っていない」のです。最近の塗り薬は効き目がよく、1~2週間塗り続けますとかゆみや皮めくれといった症状がなくなり、患者さんは治ったと思って薬を塗るのを止めてしまいます。
 足の裏の角質は非常に分厚いので、表面の白癬菌は死滅しても下層にとどまっている菌は死んでいませんから、条件さえ整えば表層に出てきて増殖します。すると、次の年の夏にまた再発してかゆみに悩まされることになります。医師の指示のもとに最低でも3か月、できれば1年くらい根気よく塗り続けることをお勧めします。
 感染経路としては、家族内感染が最も多いので家庭での対策が必要です。スリッパやバスマットから水虫がうつることが多いので、個人専用のスリッパを用意するとか、バスマットをまめに取りかえましょう。ひとりだけ治してもまたうつされますので、家族ぐるみで治療しましょう。汗かきの人や靴をはきっぱなしの人は、水虫になりやすいので足をせっけんでよく洗い、きちんと拭いて乾燥させることが大切です。靴下は汗を吸収する通気性のよいものを選び、毎日交換してください。靴も何足かをローテーションするほうがよいでしょう。
 しかし、水虫と同じような症状でも、"しっしん"や"かぶれ"のことがよくあります。皮膚科医でさえ、一目では区別がつかないことがあり、顕微鏡検査や培養検査が必要なことがあります。市販の薬を塗っても効き目がないとか悪化するようでしたら、ぜひ皮膚科専門医の診察を受けてください。  

投稿
八田皮膚科  院長 八田晋

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2013年10月 3日 木曜日

「長引く咳」で困っておられる方に

 咳が長引くのは大変辛いことです。内科の診療において、咳を主訴にして来院される方は多く、特に季節の変わり目になると目立ってきます。
期間が短い場合は、急性の感染症(いわゆるかぜ症候群)を念頭にして治療することになります(この場合、痰のからむ湿性咳嗽の時期があります)が、咳の持続期間が長くなると、これから申し上げる多彩な疾患を考えていきます。

 遷延性・慢性咳嗽(咳を咳嗽「ガイソウ」と表記します)の原因として考え
 られるのは、
   感染後咳嗽
   アレルギーによる咳嗽:咳喘息・アトピー咳嗽
   逆流性食道炎/GERD(胃食道逆流症)による咳嗽
   肺気腫/COPD(慢性閉塞性肺疾患)による咳嗽
   その他:耳鼻科的疾患、薬の副作用 などです。

「感染後咳嗽」
ポイントは、かぜ症状が先行し、自然軽快傾向がある場合
  原因微生物が既に除去されているにもかかわらず咳嗽が続く状態
  で、患者様は『風邪は治ったけど、咳が長引いています。』
  と表現されます。
  咳嗽のピークが過ぎていれば問題ないのですが、悪化するとか
  微熱が続く場合は、胸部レントゲン撮影やマイコプラズマ・肺炎クラ
  ミジア・百日咳菌の検査をします。

「咳喘息・アトピー咳嗽」
  『かぜは治ったはずなのに、咳がちっとも治まらない。』あるいは、
  『かぜは引いていないのに、咳だけがずっと続いている。』
  こんな場合は、アレルギー性咳嗽(咳喘息・アトピー性咳嗽)
  かもしれません。
ポイントは、日によって調子が良い・悪いがある、タバコの煙・
ほこりを吸うと悪化する、季節性がある、温度差・夜間・起床
時に悪化する、長時間の会話で咳出現、等の特徴がある

  上気道粘膜に炎症が続いている状態と考えられます。
  喘鳴や呼吸困難がない点で気管支喘息と区別します。
  しかし、咳喘息の場合は放置していると気管支喘息に移行する
  危険性があります。
  治療は、まず第一にステロイド吸入薬を使うことです。
  必要に応じて気管支拡張薬や経口ステロイド薬も使います。
  ステロイド薬と聞いただけで不安を感じる方がいますが、医師の
  指示通りに正しく使用すれば、炎症を抑える力を十分に発揮
  する薬です。特に吸入ステロイド薬は気道だけに作用するので、
  長期間使用しても安心です。

「逆流性食道炎」/GERD(胃食道逆流症)による咳嗽
ポイントは、食事中や食後に咳が出やすい事です
  気道ではなく食道に炎症がある状態で、治療は胃酸を抑える薬
  を使います。コーヒー、甘い菓子類を控える指導をします。
  治りにくい逆流性食道炎には、内視鏡検査で食道がんが無いか
  を確認すべきです。
  消化器内科医に相談をして下さい。

「肺気腫」/COPD(慢性閉塞性肺疾患)による咳嗽
ポイントは、喫煙者に多く、労作時息切れを伴う事です
  痰のからむ咳:湿性咳嗽のことが多く、治療はCOPDを悪化させ
  ないために、まず禁煙です。吸入薬も使います。肺炎の予防目的
  で、予防接種(インフルエンザ・肺炎球菌)を受けましょう。
  呼吸器内科医に相談をして下さい。

その他
  アレルギー性鼻炎あるいは慢性副鼻腔炎(蓄膿症)に伴う後鼻漏
  「コウビロウ」による咳嗽、降圧剤等の薬の副作用による咳嗽などが
  あります。其々、耳鼻咽喉科医、かかりつけの先生にご相談下さ
  い。

 毎年10月になると、アレルギー性喘息に悩まされる方が増えます。二つの理由があります。第一に床面や寝具にチリダニの糞が大変多くなること、第二の理由は人の体力が落ちて免疫力が低下するからと言われています。対策ですが、洗えるものは洗濯をします。寝具類は日干し後、掃除機をかけます。室内もこまめに掃除しましょう。「秋は洗濯と掃除の季節」です。
                                                            投稿 和高医院 院長 高 英哲

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